湖面に写る月の環

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──曰く、『みやこ』のメンバー全員が同じ夢を見たらしい。
曰く、そこで犬のような妖怪うわんに追いかけられたのだと。
曰く、夢の中で襲われたひがし京を庇ったにし京が、自分の部屋で何故か凍え死んでいたのだと。
涙声になっていく彼女の声に、僕たちは何も言うことが出来なかった。
「私たち、もう訳が分からなくて……」
「……真偉」
「もうやだぁ……」
ひくりと喉を鳴らしたひがし京が、静かに泣き崩れる。
(どうして真偉さんばかり)
その姿に、僕は不謹慎にもそう思ってしまった。しかし、そう感じても仕方のない事が彼女の身に起こり続けているのは事実のはずだ。
目は見えず、幼少期から大変な思いをしてきたのに、嫌がらせを受け続けた挙句、最愛の妹を亡くすなんて。
(自分が庇われてなんて、余計だろ……)
寧ろ彼女自身がそういう星の元に生まれたと思うしかないくらいには、悲惨な出来事ばかりが身の回りで起きている。そんな彼女に、僕たちはいったい何を言えばいいのか。気休めも、気の利くような言葉も、何一つ経験したことの無い自分には浮かんでは来なかった。
「ちなみに、警察には相談はしたんですか?」
「もちろん、流石にしました! けど、全然……取り合ってくれなくて……」
――人の命が亡くなったのだ。
大問題でしかない状況でも、警察はどうやら『嘘』として取り合ってくれないようだ。つまるところ、『またあの大学か』と思われたということだろう。警察の怠慢さに腹立たしくなってくる。
「ふむ。……彼女の部屋に何か異変は?」
「異変? 異変って言われても……」
顔を見合わせる三人は、考え込むように眉を下げた。部屋に入っていないのか、岡名はそんな彼女たちを心配そうに見つめている。しかし、彼女たちはあまり思い浮かばないようで。難しい顔で首を傾げる四人。暫く見つめ合ったかと思えば、「あっ!」とみなみ京が声を上げた。
「そういえば、あの子の部屋暖房が付いてなかったような気がするわ」
「あっ」
「言われてみれば確かに……そうだったかも」
「暖房?」
彼女たちの証言に、僕たちは首を傾げる。冬になり始めている今、暖房がない部屋なんて寒くてとてもじゃないが居られない。そんな中、彼女自身がわざわざ切ったとも考えにくいし、何か故障があったなら同じ家に住むひがし京が知っているはず。それがないということは、彼女の部屋の暖房器具だけを故意的にいじったということになる。
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