【コミカライズ決定】婚約者の浮気相手が子を授かったので
「お待たせしていて申し訳ありません」
 声をかけながら「お茶はいかがですか?」と紙製のコップに淹れた温めのお茶を勧める。
 そうやって彼らの話を聞き、お茶を勧めていくと、その場にいる人たちとも打ち解けてくるというもの。
 他愛のない話をしながらも、彼らはファンヌの名を聞きたがり、彼女について興味を持ち始める。ファンヌは当たり障りのない言葉を口にしながらも、エルランドとオスモの元に、薬草を基礎としたお茶を学びにきた、とだけ答えた。
 だが、彼女が何者であるか、わかる者にはわかるらしい。
 顔に大きな傷をつけた身体も大きな男が、
「もしかして、エル(ぼん)の番じゃないのか?」
 とぼそっと口にすれば、そこにいる誰もが納得し始める。
 かっとファンヌが顔を赤らめると、
「ああ、悪い、悪い。気を悪くしたなら、謝るよ」
 傷の男はあっけらかんと答えていた。どこからどう見ても謝るような態度でもないのだが。
「ま。エル坊が、そういった相手を連れてきてくれたことは、俺たちにとっても喜ばしいことなんだよ」
 エルランドのことを「エル坊」と呼べるようなこの男が、ファンヌは気になって仕方なかった。先ほど、話を聞いたときに彼の名も聞いた。
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