ビター・マリッジ
No her, No life.Ⅱ

今夜は取引先との急な会食が入った。そのことを梨々香にメッセージすると、数時間後に彼女から返信がきた。


『了解しました。今夜は夕飯いらないですね。私も、同期達数人でごはんを食べて帰っていいですか?』

メッセージとともに送られてきたのは、イラストのネコが目をキラキラとさせて両手を合わせてお願いポーズしているスタンプ。

俺も帰宅が遅くなる以上「ダメだ」とは言えないし、妻の人付き合いくらい笑って容認できる心の広い夫でいたい。

だが……、同期でご飯に行くということは、きっとあいつもいるのだろう。

たしか小山……、だったか。いつか、タクシー乗り場で梨々香の肩を抱いていたあの男も同期だったはずだ。

梨々香はあの男をなんとも思っていないみたいだが、あいつのほうはどうなのだろう。

梨々香が既婚者であることは知っているだろうに、公の場で堂々と人の妻の肩を抱いていた。その時点で、怪しい。

< 125 / 137 >

この作品をシェア

pagetop