ビター・マリッジ
「こんばんは。もうお開きなら、妻は引き取らせてもらうけど、いいかな?」
礼儀正しく見えるように口元にだけ笑みをのせて、スーツの集団に話しかけると、なぜか女性陣は頬を染めて無言で何度も頷き、小山を含めた男性陣は微妙に表情を引き攣らせた。
「行こう。車を待たせてる」
「あ、はい」
梨々香の耳元に口を寄せて話しかけると、彼女の頬がほんのりと朱に染まる。
「ごめんなさい、みんな。私はここで。お疲れさま」
「四ノ宮さん、おつかれ」
「またね」
先に車のほうに戻っていると、同僚達に頭を下げて手を振ってから、梨々香が小走りで俺を追いかけてくる。
「楽しかったか?」
「はい。みんなとご飯食べるの、ひさしぶりだったので」
後部座席のドアを開けてやりながら訊ねると、梨々香が俺を見上げて微笑む。
「そうか。よかったな」
梨々香を車に乗せたあとに、俺も隣に乗り込んだ。