ビター・マリッジ

「こんばんは。もうお開きなら、妻は引き取らせてもらうけど、いいかな?」

礼儀正しく見えるように口元にだけ笑みをのせて、スーツの集団に話しかけると、なぜか女性陣は頬を染めて無言で何度も頷き、小山を含めた男性陣は微妙に表情を引き攣らせた。


「行こう。車を待たせてる」

「あ、はい」

梨々香の耳元に口を寄せて話しかけると、彼女の頬がほんのりと朱に染まる。


「ごめんなさい、みんな。私はここで。お疲れさま」

「四ノ宮さん、おつかれ」

「またね」

先に車のほうに戻っていると、同僚達に頭を下げて手を振ってから、梨々香が小走りで俺を追いかけてくる。


「楽しかったか?」

「はい。みんなとご飯食べるの、ひさしぶりだったので」

後部座席のドアを開けてやりながら訊ねると、梨々香が俺を見上げて微笑む。


「そうか。よかったな」

梨々香を車に乗せたあとに、俺も隣に乗り込んだ。


< 129 / 137 >

この作品をシェア

pagetop