ビター・マリッジ

ぴったり三十分で仕事を片付けて、送別会が行われている店へと向かう。

店員さんに、予約がとられているテーブル席まで案内してもらうと、私に気が付いた小山くんが笑顔で手を振ってきた。


「四ノ宮さん、お疲れさま。まだ飲み物と食べ物頼んだとこだよ。ビールでいい?」

「ありがとう」

笑い返すと、隣の席を開けてくれていた小山くんがそこに座るように手招きしてくれた。

ちょうど主役の石原さんとも隣同士になれる席で、小山くんの気遣いに嬉しくなる。


「四ノ宮さん、お疲れさま」

「お疲れさま。いよいよ、退職だね。おめでたいけど、石原さんがいなくなるのは寂しい」

「私も寂しいよ。ここの会社の同期はいい人ばっかりだったし、せっかく四ノ宮さんとも仲良くなれたのに……」

そう言って名残惜しんでくれる石原さんの左手の薬指には、以前一緒に飲んだときにはなかったシルバーの婚約指輪が嵌められていた。

ついそれを注視してしまっていると、石原さんが照れ臭そうに笑う。

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