BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ああ。ジーニア嬢は生きている。どんな姿であろうと生きていることに違いはない。健康な状態で残りを過ごせると思ったら、大間違いだったということだな」
 ジュードの声が耳に届く。背を支えてくれるジュードの手は温かい。
 熱を感じるということは、まだ生きているということ。だけど――。

 ――詐欺にあったような気分だわ。お父さまにもお母さまにも会えていないのに。最期のご挨拶もできないなんて。

 目尻からじんわりと涙が溢れてくるような感覚があった。

「クラレンス殿下」
 ジェレミーの低い声が聞こえた。あの兄がこのような声を出すときは珍しい。つまり、それだけ真剣であるということだ。
「殿下は本当に妹を……。その……」
 とそこで語尾が消えていく。

 ――お兄さま、情けない。告白で失敗するタイプよ。
 ジーニアは兄にそう声をかけたいが、声を発する事すらできない。心の中で突っ込むことが精いっぱい。
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