BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 恐らくこのクラレンスは、困っているジーニアを見て楽しんでいるのだろう。明らかにわかる。顔中に「楽しいです」と書いてあるからだ。いや、書いてあるような笑顔を浮かべているからだ。
 だが、それに動揺しては相手の思う壺であるとジーニアは悟った。

「そうでしたか。わざわざお手を煩わせてしまい、申し訳ありません。ありがとうございます」

「それだけか?」

「はい?」

「いや、君は面白いな」
 そこでクラレンスはくくく、と笑い出す。
「他の女性であれば、もう少し積極的に私に求めてくるところなのだが」

「はい?」
 何を求めてくると言うのだろう。この状況でジーニアが求めるとしたらクラシリだ。

「いや、何でもない。気にするな」
 気にするなと言われてももう無理だ。クラレンスの笑顔が気になって仕方ない。

< 67 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop