BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「もしかして。クラレンス様に何かしら御礼を差し上げなければならないのでしょうか……」
 彼の笑顔の意味するところはそこだろうか。

「礼? 君が? 私に?」

「あ、はい。その、薬を塗っていただきましたので。先ほどまでの激痛が嘘のようにおさまっております。クラレンス様には感謝しかありません」

「そうか……。なら、礼をいただこう」

 突然、クラレンスの顔が近づいてきた。誰にも聞かれないように、耳元で欲しいものを囁かれるのかと思った。だが、違った。

 突然、ジーニアは唇を塞がれた。塞いだものは、もちろんクラレンスの唇。つまり、これは口づけというやつではないのか。つまり、接吻。いや、キス。ほっぺにチューではなく、唇と唇同士の。

「とりあえず、今日の分の礼はいただいた。また、様子を見に来る」

 颯爽と身を翻して部屋を出ていくクラレンス。残されたジーニアは、ただ呆けることしかできなかった。
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