BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 ――それは、私が聞きたいくらいです。
「この本は、クラレンス様が適当に持ってきてくださった本ですから」

「殿下が? どうしたんだ、一体……」

 ――それも、私が聞きたいくらいです。

「まあ、いい。それで、怪我の具合はどんな感じなんだ? あのとき、俺が気付いたときにはお前の背中にはぷすっと矢が刺さっていたからな」

「え、ええ。そうですね。ぷすっと、刺さっちゃったみたいですね。ですが、そのコルセットのおかげで、あまり深くは刺さらなかったようなのです」

「そうか……。だが、あれだろ? 傷痕は、残るんだろう?」

 ジェレミーが悔しそうな表情をしていたのはそれが原因だろう。

「え、えぇ。恐らく」

「そうか……。お前にそのような醜い傷痕を残してしまうとは。俺たち騎士団の失態だな」

「お兄さま。そんなにご自分を卑下なさらないでください。私はクラレンス様が無事であったこと、それが一番だと思っておりますので。こんな私でもクラレンス様のお役に立てたのだな、と」

「ああ、お邪魔だったかな?」

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