BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
「ですが、撫でられる側の気持ちもわかれば、自然と手も伸びますよ? 昔は兄とよく、こうやって頭を撫で合っていたのです」
 懐かしいなと思いながら、ジーニアはクラレンスの頭に手を伸ばす。

 初めて触れたクラレンスの髪は、兄であるジェレミーの髪よりも柔らかかった。と、そこまで感じた時に、なんて大胆な行動に出てしまったのかと気付き、手を下げようとしたところ、その手首をクラレンスに掴まれた。

「撫でられる側も悪くない。もう少し、そうしていろ」
 ちょうどジーニアの太ももの上に頭がくるように、クラレンスは身体を折る。

 ――ちょっと待って、なんなのこの展開。

 すっかりとクラレンスはジーニアの膝枕を堪能している様子。しかも頭を撫でろとまで言う。いくらクラレンスを励ますためとは言え、どうやら間違えた発言をしてしまったらしい。今になって後悔をする。それでもじっと優しく彼の頭を撫で続けているのは、それによって彼の力が抜けていくことを感じ取ったからだ。

 ――そうか、いくら助かったとはいえ、命を狙われているんですもの。ずっと、気が張り詰めていらっしゃったのね。
< 81 / 168 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop