BでLなゲームに転生したモブ令嬢のはずなのに
 そんなツンデレ受けにそんな言葉をかけられて、断ることなどできるだろうか。いや、できない。できるわけがない。断ったら罰が当たるというもの。
「はい……」
 消え入るような声で、恥ずかしそうにジーニアは返事をした。実際、本当に恥ずかしいのだ。抱かれながらも、ジーニアは顔を伏せるようにして頭をグレアムの胸元に預ける。それは不安定でそこに頭を預けなければ落ちそうになってしまうからであって、不可抗力であると思っていただきたい。そして、絶対に兄であるジェレミーには見られたくない、と。そう思っていた。
 グレアムはジーニアを抱いたまま、廊下を進み、突き当りを右に曲がって、さらに進み、その突き当りで左へと曲がった。ここまで来れば人も少ない。グレアムの表情を確認するかのように、ジーニアは顔をあげた。

 ――やっぱり、かっこいいかも……。

「ジーニア嬢の部屋は、こちらで合っておりますか?」
 部屋へと入る前に、グレアムは部屋の確認までしてくれた。はい、と俯きながらジーニアは答える。
 グレアムはジーニアを抱きかかえたまま、器用に扉を開けて部屋へと入っていく。

「あ」
 とグレアムが、気の抜けた声を出したのは、ジーニアの部屋のソファに一人の男が足を組んで腕を組んで座っていたからだ。
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