エリートSPと偽装婚約~守って、甘やかして、閉じこめて~
「慧さんまだかな……」

寂しくなってくる。
早く、この部屋で一緒に過ごしたい。

ゲームも映画もたくさんあったし、アメニティも普段では手の出ないブランドのものが揃っていた。ちょっとわがままを言って泊まらせて貰おうか。

パーティーでは食事もあまりとれなかったから、少しお腹が空いている。お腹がきゅるると鳴ったところで部屋の内線が呼び出される。

出るべきか悩んだが、フロントの番号だったので出ることにした。

「はい」

『フロントです。梧桐様より、ルームサービスを仰せつかりました。これからお伺いしてもよろしいでしょうか』

少し緊張して出たのに、拍子抜けだ。

「ルームサービス?」

『軽食を賜りまして、スコーンと紅茶のご用意がございます』

「大丈夫です。お願いします」

慧さんが頼んでくれたんだ。
このホテル併設のベーカリーで焼いているスコーンだ。とても人気で、午前中で売り切れてしまうらしいから是非食べてみたい。

挨拶で忙しいはずなのに、気づかってくれたらしい。
電話を切るとすぐにルームサービスが来た。一応相手を確認しドアを開ける。

部屋にいれていいのか悩んだのだが、相手は制服で名札も付いていたし、部屋付きのバトラーだというので、大丈夫だろうと判断する。
バトラーはうやうやしくワゴンを押して入ってくる。

スコーンは焼きたてだったのか、バターの良い香りがした。
もしかしたら、特別に用意してくれたのかも。

「どうぞ」

窓際のテーブルにセットしてくれて、紅茶に湯を注ぎ、砂時計をセットする。

茶葉の香りにも包まれて、とても心が落ち着いた。
嬉しい。
一緒に食べれたらもっと嬉しいのに。

「お手紙を預かっております」

「手紙?」

なんだろう。シンプルな白い封筒を渡された。

(きっと、慧さんからのお手紙だ)

早く読みたくてうずうずとした。
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