エリートSPと偽装婚約~守って、甘やかして、閉じこめて~
映画が終わると、そのままベッドでごろごろとする。
外は日が暮れようとしていて、窓からは都心のビルをオレンジに染める見事な夕焼けが見えた。
伸びをする慧さんの背中に触れる。

「マッサージしてあげる」

今度こそわたしの出番だと張り切った。慧さんは体をビクッとさせる。

「いや、いいよ」

「わたしにも何かさせて欲しいって言ってるのに。もしかして弱いの?」

にやりとして脇腹に手を伸ばす。

「あ、ちょっと。やめなさい」

いたずら心が芽生えたわたしは、抵抗しようとする慧さんに飛びついた。
焦る彼はめずらしい。調子に乗ってくすぐった。

「あ、詩乃っ! ほんとにそういうのいいからっ」

「だーめ」

逃げる慧さんを、笑いながら押し倒す。

「――――こら!」

「きゃあっ」

叱られると同時に視界がぐるりと反転する。体が浮いたと思ったら、ボスンとベッドに背中から落ちた。
気が付くと、慧さんがわたしのお腹に跨っている。
腕はベッドに固定された。体を捩ってみるがびくともしない。

「あ、あれ?」

形勢逆転されてしまっている。

「悪い子だな。まったく、どういう立場かわかっていないらしい」

慧さんはぎろりと睨んだ。
ふざけすぎだったかな。

「だ、だって慧さん、全然わたしにお礼させてくれなくて」

「俺もね、男なんだよ。付き合うときまってから、無邪気で可愛い姿を見せらせて、どれだけ我慢していると思っているんだ。昨夜は特に、拷問のようだったよ」

「う、うん?」

なんの話だろう。
重なった手が熱い。

「――――そんなに言うなら、本当にほしいものを貰おうかな」

彼の顔が迫る。
いつもとは違う色気を纏っていた。
互いの鼻先が触れる。

(本当に欲しいもの?)

「これは、俺を煽った君が悪い。責任をとってもらおう」

「――――け」

ぱくりと唇をたべられる。
慧さん、と呼んだ声は彼の口に吸いこまれた。
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