エリートSPと偽装婚約~守って、甘やかして、閉じこめて~
わたしの事件をの解決を優先すべく、記事が世に出ることを止めなかったが、実はそのせいで後々大変だったそうだ。

相手の会社は取引先でもあった。服飾ファッションとジュエリーは切っても切れない存在だ。
会社に影響のないように処理をしなくてはならない。

互いの親への説明もあり、彼女の機嫌をそこねないように結婚をやんわり断りつつという繊細な交渉であった。

仲が良いので、ふざけていたときにたまたま撮られたという、互いの体裁を保ったところに落ち着いたらしい。

「まったく、ブランド側には娘を弄んだのかと責められるし、父親には詩乃はどうするだと殴られそうになるし散々だったよ」

ぼやく慧さんではあった。

それを落ち着かせることができたのが、旅行期限ギリギリの昨日の夜だ。

あんなに積極的な女性をどのように丸め込んだのか、慧さん曰く “ちょっと強引な手をつかった” とのこと。
わたしにはまだまだ、彼の知らない一面があるらしい。

「一件一件の事案は大して事はないんだよ。一度にきたからバタついただけで。でもまぁ落ち着いたよ。
詩乃には記事のことで、嫌な想いをさせてしまってごめんな。改めて言うけれど、彼女とはなんの関係もなかったし、これからもない。俺は詩乃にしか興味がないのだから」

「……慧さんがそう言ってくれるなら大丈夫……」

不安だったのはもう過去だ。

わたしが勘違いをして、すれ違ってしまったことを教訓に、たくさんの言葉をくれるようになった。
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