エリートSPと偽装婚約~守って、甘やかして、閉じこめて~
わたしの存在は、慧さんを以前から狙っていた人たちに火をつけてしまっていた。

自覚がないとか散々いわれていたが、注目を浴びる原因はやっぱり慧さんだったではないか。

ちょっと不満に感じて小言を言ったら、

「俺じゃなくて詩乃が綺麗だからみていたに決まっているだろ」

と応酬された。

実はその言い合いは、海吏さんのお店で行われていたのだが……

わたしが勘違いをしてしまったお詫びをさせるという名目で、海吏さんに奢らせていた時の出来事であった。

「慧さんが格好いいから!」

「詩乃が可愛すぎるからだってば」

とバカップルさながらの言い合いを海吏さんに聞かれてしまい、思い切り引きつった笑顔を向けられた時の恥ずかしさといったらもう。

「いつも恋愛してなかったやつが嵌まると面倒だよね~」

と海吏さんは冷ややかだった。



ゴシップ記事は梧桐の力で握りつぶすことは簡単だったが、ホテルでの一件の後で、慧さんはこれが陽動に使えるのではと考えた。

慧さんはわたしのお父さんとお母さんに週刊誌に乗ることと、それを見て動く人間がいるかもしれないということを先立って知らせた。

つまり、ふたりは記事のことをわたしより先に知っていたわけだ。

(だから、慧さんの浮気写真を見てもあまり驚いていなかったんだ)

ホテルで過ごした後に、慧さんが立て続けに忙しくなったのは仕事だけではなく、記事についての処理と、相手の女性への対応、それに秘密裏に進めていた理央の調査などだった。
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