ねぇ…俺だけを見て?
史依が煜馬を最初に見かけたのは、四年前だ。

父親に連れられ出席した、美崎化粧品のパーティー。
その時はまだ、豹典に振られたことを引きずっていた。

でも、早く前を向きたいとも思っていた。


小柄で、柔らかく可愛らしい雰囲気の史依。
色んな男が、声をかけてきていた。

「今度、ドライブでもどうですか?」
「向こうで、一緒に飲みませんか?」

それをやんわり断りながら窓際に行き、窓の外を眺めていた。

庭にいる男性が目に入った。

「綺麗な人……」

釘付けになり、しばらく見つめていると……
男性が空を見上げた。

目から、涙が落ちた。

「え……泣いてる……?」

しかし泣いてるのではなく、雨が降りだしたのだ。
それが、頬に落ちて涙が流れたように頬を伝ったのだ。

雨を避けるように、パーティー会場に入ってきた男性。
会場の従業員がタオルを渡すと、微笑み“ありがとう”と言った。

そこではっきり顔が見え、史依の心臓がドクンと痛んだ。


その日から、その男性の顔が忘れられなくなった。
何をしてても、男性の顔ばかりが浮かぶ。

一ヶ月程して、その男性が美崎 煜馬だと知る。

美崎化粧品の御曹司として、雑誌に出ていたからだ。

どうにかして面識をとれないか考えたが、相手は美崎化粧品の御曹司。

美崎化粧品と田野ビューティーでは、天と地の差だ。

なかば諦めかけていた時に、見合いの話がきたのだ。


史依は、これを“運命”だと思った。
例え好きになってもらえなくても、一緒にいられるなら十分幸せだ。
家政婦のように、お世話をさせてもらおう。

そしてその日から家事全てを猛練習し、見合いに備えたのだ。


「一目惚れ……みたいな感じなの……
上手く、言えないけど……
豹くん以来、傍にいたいって思えた人だから……!」

「そっか!ごめんね、史依。
変なこと聞いちゃって!」
「ううん。たまちゃんには、沢山助けてもらったよね……!」

「そうよ~カラオケに、ケーキバイキング、旅行………色々行ったわよね~」

「そうだね!」

「史依が、幸せならいいの!」

「うん!幸せ!」


「そっか…幸せか……」

史依と珠稀の話を、ただ黙って聞いていた豹典。
豹典の呟きが、賑やかな店内のざわめきに消えた。
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