ねぇ…俺だけを見て?
エントランスに下りるエレベーターの中。
煜馬は、余韻に浸っていた。

「………つか!可愛すぎだろ!?(笑)」
頬にキスをした後の、史依の表情(かお)

顔を真っ赤にして、見上げていた。

煜馬は、髪の毛をクシャッとかき上げた。
その時の、可愛い表情(かお)が忘れられない。
「ヤバい…既に会いたい……」


マンションを出て、歩いて駅に向かう。
煜馬は運動の為にも、交通機関を使って出勤している。

会社に着くと、同僚で友人の岩国(いわくに) 安吾(あんご)が声をかけてきた。

「おはよ!副社長!」
「は?安吾か?
てか、副社長って…」

「後二週間もすりゃあ、副社長だろ?
田野の娘と政略結婚して、吸収できたからな!」

「………………そんな風に言うなよ……」

「は?
え━━━━━!!!?いく…ま…?」
煜馬が凄まじい顔で睨んでいた。

「安吾、いいか?
もう二度と、フミのことそんな風に言うなよ?」

「わ、わかった。わかったから!
━━━━━つか!どうしたんだよ!?」

「何が?」
「家政婦雇う感覚だっつってたじゃん!」

「あー、そうだな」
「お前まさか…本気……!?」

「そうだよ」

「そうゆうことか……!
じゃあ…尚更だな!」
「え?」

「結婚祝い!
お前の嫁さんと三人で今日の夜、飯でもどう?
もちろん、奢るから!」
「飯?」

「うん。飯。
美味しい酒があるとこがあんだよ!
俺と嫁さんは軽食食べて、煜馬は酒を楽しめばいいだろ?」

「フミに聞いてみる━━━━━」



史依に了解を得て、煜馬の会社近くの駅で待ち合わせることになった。
仕事を終え、煜馬と安吾は駅に向かう。

「何時?」
「18時32分のやつに乗るって言ってた」

「じゃあ、もう着いてるよな?」
「あぁ」

「何処?いる?」
「いや、いないな…」
(まさか、なんかあった!?)

煜馬がスマホを取り出すと、丁度メッセージが入っていた。
“32分の電車に乗り遅れちゃって、43分のに乗りました。ごめんね!
岩国さんにも、伝えてください!史依”

「━━━━だって」
「そう。じゃあ…もうすぐだな!」

すると大勢の乗客が出てきて、その中から小さな史依がパタパタと駆けてきた。

「あ!煜馬さん!」
「フミ!」

「遅くなってごめんなさい!!
せっかく、煜馬さんのご友人がご招待してくれたのに、遅れるなんて……!」
煜馬と安吾に、ペコペコ頭を下げ謝る。

「フミ、頭上げて?大丈夫だから!」
「そうだよ!気にしないで!」

「そんなこと……あの!私はこんなですが、煜馬さんは私にもったいないくらい素敵な方なので、これからもよろしくお願いします!!」
再度、頭を下げる史依。

「………」
「………」
フリーズする、煜馬と安吾。
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