君の歌を聴きたい。
第1章 なぜ君が
「ウタ、おはよー!......今日も元気ないね。また徹夜か?」
「徹夜は....してない.....」
「いや絶対嘘だろ。これ徹夜コースだぞ」
「ウタは本の虫だからなー」
明るい声に囲まれて教室へ一歩踏み出す。
体が重い。
昨日ハマってしまった小説を夜三時まで一気読みしてしまったせいか。
おかげで睡眠時間は約2時間。
先生たちが泡を吹いて倒れそうな時間だ....
「ウタぁ、新曲出たんだよ!Pokiの!」
「興味無い」
「もういっつもそうやって~」
親友の茉奈(まな)が最近ハマっているのは今中高生、20代を中心に大人気の歌い手、Poki(ポキ)
顔や年齢はだしておらず、明かされているのは性別のみ。
最近はPokiが高校生だという噂も広がりつつあり、中高生の人気に火をつけている。
私は全く興味が無いが、かなり知ってるのには訳がある。
昔、転載作曲・作詞家と騒がれたお父さんが楽曲提供した事があるのだ。

ーもうそれも昔の話だけど。

担任の相田が勢いよく戸を開けて入ってきた。ホームルームが始まる。
「今日の日直誰だ?」
「あ、多分俺でーす」
日直は宍戸(ししど)だった。
約半年前、高校2年生になったばかりのとき引っ越してきた。
それなのに半年でクラスのお調子者認定されている。
他のクラスの女子にも人気があるらしく、休み時間には他クラスの女子からの貢物が絶えない。
おかげで宍戸はいろんな男子の敵を作っているらしいが、本人は柔道だったか、空手だったか......で対応されるので宍戸に挑んで死さなかったものはいないという噂だ。
「あ、そういえば先生、俺、宅急便のバイト始めたんすよ!先生の家にも行くかもしれないんで、家突き止めたらバラしますね!」
「やめろ宍戸」
相田と宍戸のやり取りはいつでも教室を笑いの渦へ引き込む。
それが人気者の理由なのか。
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