再会は光の中で~ひっそりと子育てしていたら、あなたの愛に包まれました~

2.あの頃の私たち


 軽い衝撃を腕に感じた瞬間、ポップコーンが足元一面に広がる。行きかう人々は立ち止り、私も、そしてぶつかってきた女の子も、すべてが凍り付いたようにストップした。

「うわぁぁぁーん!」

 ライトパープルのドレスを着て、髪型も綺麗にセットされた五歳ぐらいの女の子は、星型のバスケットから半分以上こぼれ出てしまったポップコーンに大きな声で泣き出した。

 ここはシャイニーワールドの彗星の城前にある広場だ。数か月前から園内スタッフとしてアルバイトをしていた私は、指示された場所へ行く途中、他のお客さんに気を取られ、動き回っていたその女の子にぶつかってしまった。

「ちょっと、これ買うのに一時間も並んだのよ! 食べながらショーを見るって、楽しみにしてたのに。もう始まっちゃうじゃない!」

「もっ、申し訳ありません。すぐに弁償しますから」

 女の子の母親らしき人は、声を荒げて私を睨みつける。女の子はさらに大きな声で泣き続けた。その時、私の前に大きな体が割って入った。

「申し訳ありません。残念ながらすぐには準備できませんが、こちらのチケットを差し上げますので、後ほど売り場で声を掛けていただけますでしょうか? 同じものをお渡ししますので」

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