再会は光の中で~ひっそりと子育てしていたら、あなたの愛に包まれました~

 その言葉を聞いてすべてを悟った。これは祖父が手を回したことなのだと。
 十歳の頃、両親を事故で亡くし、母方の祖父である守崎グループの創業者、守崎修治(しゅうじ)が一人っ子である俺を引き取った。
 祖父は一人娘である母の結婚に反対し、俺たち家族は一度も祖父と顔を合わせたことがなかった。初めて会ったのは引き取られてからだったが、ムリに苗字を改名させず、俺を育ててくれた。徐々に祖父から組織のことを教えられ、大学を卒業し、アメリカへ留学をした。帰国後、会社の内部を学ぶため、シャイニーワールドで働くようになった。そこで出会ったのが亜澄だ。
 彼女が姿を消し、正式に入社する直前、苗字と経営を引き継いだ。複雑な思いはあったが、年老いた祖父と会社を放り出すわけにはいかなかった。

 

「カメラの準備が整いました。時間になりましたら贈呈式を行います」

 入場者記念は数年ぶりに行ったイベントだった。CM撮影の関係もあり、該当者は若い親子と決まっていた。おおよその入場者数で決められた該当者にスタッフが当たりをつけ、決定している。
 手渡された資料の名前を見て、慌てて案内スタッフに確認をした。

「本当に二十九歳の母親と、三歳の娘なのか?」

「はい。CM撮影にピッタリな、かわいらしい女の子でしたよ」

 まさか、嘘だろ? きっと同姓同名の女性かもしれない……。

 湧き上がる焦燥感を必死に抑えた。

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