先生愛してる
「瞳ちゃんは結婚しないの。」
同じ事務で高校生の子供がいる田中さん。
いつもお喋りしながら二人で事務の仕事をしている。
この仕事は先生たちが授業などで使うものを整える仕事だ。
二人で多様な仕事をこなさなければならいので、意外と忙しい。
事務室と職員室は別なので、先生たちと話す機会は少ない。
よって、ほぼ田中さんとの関わりが中心となる日常である。
「結婚相手も彼氏もいないです。」
パソコンを打ちながら答える。
「せっかく可愛いのにもったいない。数学の広瀬先生とかどう。」
楽しそうに、キラキラと伝える田中さん。
「先週転居の書類取りに来ましたよ。彼女さんと同棲すると言ってましたよ。」
エクセルの表を整えながら答える。
微妙なずれが上手くいかない。
「あら残念。じゃあ、橋本先生はどう。」
ドキッ。
橋本先生は体育の先生だ。
身長は180cmを超えており、ちらりと見える筋肉がとても美しい。
それでいて笑顔輝くイケメンである。
その風貌から生徒たちからも人気がある。
それでいて優しい。
話しているとドキドキしてしまう。
でも、そんなイケメンと付き合えると夢見ていられるほど若くない。
「橋本先生は彼女いるでしょう。」
推測ではあるが、あんな完璧イケメンにいないはずはない。
すると田中さんが食い気味で話してくる。
「それがね、いないんだって。彼女。この間聞いちゃった。イケメンなのにもったいないって言っちゃったわ。」
私の思考が止まる。手が止まる。
え、彼女いないの。
その動揺している姿に気付いたのか、田中さんはさらに衝撃の一言を言う。


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