イケメン俳優パパ『生田 蓮』に恋をして――。
「今日、保育園のお迎え、十八時で大丈夫ですか? ふたりでお話がしたいです」

「はい」

 たまにはこういう感じで、ちょっとだけお迎え遅くなっても、大丈夫だよね?

 彼は窓を開けて、新鮮な空気を車の中に取り入れた。心地よい風が流れてくる。

「まずは、あの時の質問に答えさせてください」

 生田さんはあの女優さんとお付き合いしているのか? という質問だ。

「はい」

 私、朝からほとんど「はい」としか言えてない。今日の彼はいつもよりも強く、私は彼に押されぎみ。

「お付き合いはしておりません! 元彼女ですが、恋人に戻ることはないです!」

 はっきりと言いきった!

「もう、なんであの記事、復縁とか書いたんだろう」
 彼をちらっと見ると、そう呟きながら眉間に皺を寄せていた。
「そのせいでこんな……」
 今度は口をへの字にしている。

「コロコロ表情が変わって、今日の生田さん、可愛い」

 心の呟きを声に出してしまった。

「可愛いだなんて……。僕は、真剣なんです!」
「あ、ごめんなさい」
「いえ、良いんです。江川さんに可愛いって言われるのは嫌じゃないですから」
「……」
「あのですね、撮られた時、彼女と斗和の服を一緒に買いに行ってたんです」
「服を?」
「はい。女の子の服、よく分からなくて。ちなみにあの写真ですが、結構前に撮られたやつで、江川さんからあの可愛い服のサイトを教えてもらった時よりも、だいぶ前のものです」
 そうだったんだ。
「それに、あちらにはもう別の恋人がいますし。だから、恋人になるとか、本当にありえません!」
「そうだったのですね……」

 彼は車をどこかの駐車場に停めた。
「ちょっと、歩きませんか?」
「はい」

 車から降りると、辺りには多くの緑があった。少し歩いて木の階段を上ると、街が見下ろせる高台にたどり着いた。空気が綺麗。

「僕は、子供たちと皆で過ごすのももちろん好きですが、こうして、ふたりで過ごしたいとも思っていました」

 景色を眺めていた私は、ふと彼を見る。
 彼はじっとこっちを見つめて言った。

「実は今、こうしてふたりきりでいることに、すごくドキドキしています」

 いつも大勢の人に囲まれている、大人気な俳優さんが、私なんかに?
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