イケメン俳優パパ『生田 蓮』に恋をして――。
「江川さん!」
「はい!」
「あの人のところへは、戻らないでほしいです」
「戻るわけないです。だってあの人は――」
 妊娠中に不倫された話から、別れるまでのことを全て彼に話した。
「そうだったのですね……僕、今電話が来た時、とても不安になったんです」
「不安、ですか?」
「はい、江川さんがその人と会い、寄りを戻して、僕から離れていってしまうのではないかと」
「生田さん、私から離れはしないです。離れるとすれば、生田さんから離れていくのだと、ずっと思っています。だって、生田さんはとても魅力的で……」
「ありえないです! 離れるだなんて、考えられないです。『もう会わない方が良い』って江川さんに言われて、実際、保育園でしか会えなくなった時は、しんどかったです」
「私もです。というか、あの時は一方的に電話切ったり、発言とかも、色々とごめんなさい」

 振り返れば、本当にあの時はどうかしていた。彼の話を最後まできちんと訊いていれば、あんなことになんてならなかった。
 あの時の勘違いも甚だしい。

「きっとあのひとり暴走は、毎月来るバイオリズム低長期と重なったせい……」
「バイオリズム低長期……。毎月来るのですね。何かお力になれることがあれば気軽に言ってください」
 あっ、心の呟き、声に出してた。しかも、きちんと彼は真面目に向き合ってくれている。そう、いつも真剣に向き合ってくれる。

「ありがとうございます」
< 42 / 47 >

この作品をシェア

pagetop