放課後の音楽室で
「遅くなると、新田さんも心配するだろうし、帰ろうか」

「うん」

上田くんの腕が私の身体を解放する。私も腰に回していた手を離して、一歩後ろに下がった。

お互いの視線が、街灯の下で交わり、ふふっと笑うと、上田くんも照れ臭そうに笑った。

「もう、バンドはやらないの?」

「うん。先輩たちも受験勉強あるし。元々、文化祭に向けてって感じで入ったから」

それに、菊池先輩とのこともあるから、少し気まずい。

「じゃあ、また音楽室でピアノ弾く?」

「うん」

そう答えると、上田くんは嬉しそうな表情を見せた。

「春に骨折した時からかな。練習中、佐久間のピアノの音が聞こえないと、ちょっと寂しくなる」

えっ…。

「…そうだったの?」

そんな風に思っていたなんて知らなくて、私の胸がトクンッと跳ねた。

「うん。佐久間が見てくれてる気がして、やる気出る」

素直に、上田くんの言葉が嬉しくて、頬の筋肉が緩む。

「来週から、また音楽室に行くね」

そう言うと、上田くんは嬉しそうに笑って頷いた。

すぐにでも手が触れてしまいそうな距離で並んで歩く。

自分の心臓の音が聞こえてしまうそうなくらい大きな音を立てている。


家の門の前に着いて、上田くんの顔を見る。

「上田くんは、連休は練習漬け?」

「ううん、振替休日はオフだよ」

「そっか。ゆっくり休んでね」

「うん。佐久間も色々疲れてるだろうし、休んで」

上田くんはそう言うと、背中を向けて、歩き出す。

「う、上田くん」

「ん?」

上田くんの背中に声をかけると、クルッと向きを変えて不思議そうに私を見た。

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