放課後の音楽室で
「私、上田くんのこと好きになって良かった」

素直な気持ちを伝える。

私の話に耳を傾けて、私の思いを受け止めてくれた。

面倒臭くて、離れることだってできるけど、それはしなかった。

それどころか、私を好きなままでいてくれる上田くん。

「…俺も、そう思うよ」

優しく微笑むと、上田くんは手を振って軽やかに走って帰って行った。

ふふふっ。

今日は、色々あった1日だったな。今は、すごく幸せ。

付き合うわけじゃないけど、同じ気持ちでいると言う事実が、私の気持ちを満たしている。

そして、そのことが心の支えになっているということを自覚している。

自分がにやけているのが分かり、慌てて両手で頬を覆った。









「文乃さん、おかえりなさい」

玄関に扉を開けると、新田さんが笑顔で立っていた。

「ただいま」

いつも通り言ったつもりだけど、新田さんは、ふふふっと微笑んで、口を開いた。

「顔赤いですよ?」

「えっ?」

新田さんの表情から、きっと色々勘付かれていると察して、慌てて頬を押さえる。

さっきの会話聞こえてた…?

「私は、文乃さんの味方です」

あー…やっぱり聞こえてたんだ。でも、新田さんが味方になってくれるなら、すごく心強い。

「新田さんって…私の許嫁見たことある?」

「いえ…私もどなたなのか詳しくは…」

そうだよね。知ってたらきっと教えてくれてる。







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