放課後の音楽室で
第16章 もう一踏ん張り
「寒っ」

2学期の終業式。

ストーブはついているものの、なかなか暖まらない体育館はかなり寒い。

全校生徒の集まっている空間は、明日から冬休みという感覚が湧き上がる。

とはいえ、3年生は受験に向けた補講があるから明日からも登校だけど。

ふと、斜め前にいる佐久間の後ろ姿が目に入る。

すっかり伸びた髪の毛は背中の真ん中くらいまできていた。

ふと、佐久間の隣に立っていた隣のクラスの男子が、佐久間に話しかけたのが見えた。

突然話しかけられて驚いた様子を見せた佐久間だけど、すぐにコソコソっと話し出す。

あの男子と、接点なんてあっただろうか。

ちょっとだけ、心の中がモヤッとしたけど、そのことを認めたくなくって、慌てて掻き消す。










「上田先輩」

終業式が終わり、体育館を出ると後ろから名前を呼ばれて振り返る。

「あっ、木下」

曲がり角のところに立っていたのは、野球部の2年生のマネージャー。

「久しぶり」

引退して以来、全く校舎内ですれ違うことのなかったマネージャーに近づいて挨拶をする。

「下校後、ちょっとだけお時間もらっても良いですか?」

「う、うん。いいよ」

珍しい。でも、木下真面目だから部活関係の相談か?

「どこ行けばいい?」

「えっと…じゃ、じゃあ…昇降口横の空き教室に」

「了解。じゃあ、後でな」



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