誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 十二月の街はイルミネーションが美しく、クリスマス一色だ。そんな街を眺めながら私は家路へと着く。

「奥様、夕食は今日はビーフシチューなので温めてくださいね、あと冷蔵庫にサラダや作り置きも入ってますからね」
 家に入って温かい空気にほっとしたところで、家政婦の小林さんに声をかけられた。
 仕事をしたいと言った私に、悠希さんが家政婦さんを雇うことを条件としたためだ。

『絶対に無理をしない。天音は家事も仕事も完璧にしようとするからダメだ』
 そう言って、あっという間に沢渡家からベテランの家政婦さんを連れてきてくれた。小林さんに、私はコートを脱ぎながらお礼を伝える。

「ありがとうございます。嬉しいです。寒かったのでちょうど食べたかったんです」
「今日の隠し味、当ててくださいね」
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