誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
「次はあなたですか?」

 その冷たく抑揚のない声に、私はここに来たことを後悔する。
 人を殺すとまではいかないが、失神させられるのではないかと思うほど、冷たい視線が私を射抜く。

「かなり下で派手に騒いでいただいたようですね」
その低い声音に、私はビクっと肩が揺れた。

いくら会うためとは言え、迷惑をかけたことは事実だ。それに、彼からしてみれば、一方的に縁談を断ってきたと思えば、今度は違う人に変更しろ。そんな無茶苦茶な話が通じるわけない。

 無謀すぎる祖父の命令に、私は何も言えず立ちすくんでいた。
 会うまでは必死だったが、目の前に座るその人の威圧感に、立っているだけで誠意いっぱいだ。

 一見して高級だとわかる仕立ての良いスリーピース、そして胸元には弁護士バッチ。一分の隙もないほど完璧に整えられた少し長めの髪が威圧感を増していた。
< 25 / 44 >

この作品をシェア

pagetop