誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
「演技だなんて……」
 
 否定しようと思うも、彼からすれば最悪な結婚のはずだ。父上の命令じゃなければすぐさま断っていることだろう。
 そんなことを思っていれば、彼はデスクに戻ると引き出しを開ける。そして私の目の前にファイルを置いた。

「あなたの従妹が選んだ家ですが、私はまだ一度も見ていません。家具など引き続き手配しておいてください。そして住めるようになれば私に連絡を。あとのことは秘書に聞いてください。形だけとはいえ、別居をするわけにはいかない」

「かしこまりました」

 仕事の業務連絡でももう少し穏やかな空気が漂う気がした。これが今から一緒に住み、結婚をする男女の会話とは、にわかに信じられないがこれが現実だ。

 静かに伝えれば、彼は机の上にあった電話の受話器を手にした。
「すぐに来てください」
< 32 / 44 >

この作品をシェア

pagetop