誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 ホッと安堵すれば、彼女も私の前に腰を下ろした。

 そのタイミングで扉がノックされ、かわいらしい女性がお盆を手に入ってきて、私の前に冷茶を置いてくれた。
そのとき、私のお腹がグーっと音を立てた。

「すみません……」
 本当に恥ずかしすぎる。朝からいろいろあって飲み物はもちろん、食事もとっていなかったことを思い出す。先ほどまでは緊張でそれどころではなかったが、少し気が緩んだのかもしれない。
 今度こそ、松前さんは綺麗なまん丸な瞳を大きく見開くと、声を上げて笑い出した。

「申し訳ありません。つい」

「いえ、笑っていただいた方が気が楽です。いろいろあって朝から何も食べていなくて」

 正直に伝えれば、彼女はお茶をもってきてくれた女性に何か声をかけた。
 しかし、さすがこれほど大きな事務所の秘書だ。すぐに表情を作り私に視線を向ける。
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