誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
新たな日々と願い

『お父さん!』

必死に大好きな父を取り戻したくて、大きな声で叫ぶ私を取り押さえる大人たち。泣き崩れる母。そして必ず場面は変わる。それがもうわかっている。

早く起きなきゃ。身体は眠っているのに、やたら頭がクリアで意識があり、息苦しいのに目覚められない。ふたりが笑顔から苦悩の表情に変わり消えてしまう。

こんな夜を何度過ごしてきたのだろう。

夢だと頭の中のことだと理解しているせいか、さほど取り乱すことなく起きるも、シャツはべっとりと汗で張り付いていた。
私は何度か呼吸をした後起き上がる。

「環境が変わったからかな……」
窓の外に無意識に視線を向けていた私は、初夏の咲き乱れる花々に、今自分がいる場所を思い出す。

そして、今はまだ昼間だ。片づけをしながら、少しだけ休憩とベッドに横になった途端睡魔が襲った。
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