誰も愛さないと言った冷徹御曹司は、懐妊妻に溢れる独占愛を注ぐ
 初めてここに連れてこられた日のことを、今でも昨日のように思い出せる。

 日の光が入り、白い大理石の床が輝いている玄関ホールへ入ると、飾られた美術品の数々、小さい頃この階段で遊んだことを、薄っすらと思い出すも、遠い昔のような気がした。

 懐かしさもあり、周りを見回していた私だったが、人の気配を感じその方向に視線を向けた。

 赤いじゅうたんが敷かれた階段の上から、見覚えのある人が降りてくる。その表情から、決して歓迎されていないことがわかった。
 蔑むような瞳を向けられ、無意識に息を止める。
 
そこで、ようやく両親が亡くなってから息をした気がした。今までとはまた違った現実が始まったことを肌で感じる。

『本当に来たのね』
 父の弟の妻である叔母の清子(きよこ)さんと、その娘でひとつ年下の従妹の円(まど)花(か)。
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