片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜



 その後も、プライベートな質問をされては躱してを繰り返し作業を進めているうちに、あっという間に授業が終わった。

「お疲れ様でした。お料理はすべてお持ち帰りですか?」

 授業の後、四人分の料理を丁寧にタッパーに詰めている智美さんに声をかける。

「はい、実は今日は夜から職場の飲み会があって……。料理は一度家に持って帰って明日家族でいただきます」
「そうでしたか。お休みの日まで大変ですね」
「いえ、先ほど話した好きな人も参加するので、私から参加を申し出たんです」

 そう言う智美さんは心底嬉しそうで、純粋にその人のことが好きなのだろうと、微笑ましい気持ちになった。

「楽しんでくださいね。ちなみに、今日の授業はどうでしたか?」
「大変でしたけど、ためになりました。私も、料理もっと頑張ってみます。また緋真先生の授業予約してもよろしいですか?」
「よかった。もちろんです。いつでもお待ちしてますね」
「はい。よろしくお願いします。それから次ももっといろいろお話したいです」

 また意味深なことを言って、智美さんが綺麗な笑みを浮かべる。

 ちょうど次の授業の生徒たちがやってきて、挨拶を交わしていると、彼女はそそくさと荷物を片づけて去っていった。

 なんだろう、この感じ……。単に私が気にしすぎてるだけ?

 しばらくの間、智美さんの後ろ姿を目で追っていたけれど、次の授業の生徒に声をかけられ、気持ちを切り替えたのだった。
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