片恋慕夫婦〜お見合い婚でも愛してくれますか?〜
ここまで準備してきたのだ。私としてはこのまま抱かれる覚悟はできている。
だけど伊織さんの誠実な思いが伝わってきて、胸がきゅうっと締め付けられた。
「……今度、旅行にでも行こうか。新婚旅行もちゃんと行けてなかったし、気を使ってくれたんだろう?」
伊織さんの言う通り、私たちは新婚旅行はしない選択肢をとった。伊織さんは気にしないでと言ってくれたものの、病院勤務の彼にまとまった休みをとってもらうのは気が引けた。
代わりにいつか旅行に行こうと話していたのだが、こんなすぐに実現するなんて。
「嬉しいけど、いいの? 呼び出しとかあるかもしれないし……」
伊織さんは当直勤務がない限り表向きは土日休みにはなっているが、呼び出しもある上に週末に外勤が入ることもある。そのおかげで結婚してから、休日の丸二日間を一緒に過ごしたことがないのだ。
「大きな病院ってことは医師の数だって多いんだ。調整さえすれば新婚旅行くらい問題ないさ。逆に緋真こそ大丈夫?」
「そっか。それなら行きたいな。私こそ融通が利く仕事だから大丈夫だよ」
「よかった。じゃあまたあとで決めようか。もし行きたいところがあれば考えいおいて」
「うん、ありがとう……」
いつの間にか、先ほどの甘やかな雰囲気はすっかりなくなっており、穏やかで優しい時間が流れている。
体には物足りなさを残しつつも、心が十分に満たされるのを感じていた。
伊織さんはもう一度私の髪へ触れ、ふわりと撫でると、僅かに目を細めた。
「……それにしても、緋真がはっきり言ってくれて嬉しいな」
「そうかな?」
「うん。今回みたいに知らないうちに誤解されたり不安にさせたりするのは嫌だから、思うことがあれば何でも言って。もちろん、俺もそうさせないようにはしたいけど、すべては難しいと思うから」
だけど伊織さんの誠実な思いが伝わってきて、胸がきゅうっと締め付けられた。
「……今度、旅行にでも行こうか。新婚旅行もちゃんと行けてなかったし、気を使ってくれたんだろう?」
伊織さんの言う通り、私たちは新婚旅行はしない選択肢をとった。伊織さんは気にしないでと言ってくれたものの、病院勤務の彼にまとまった休みをとってもらうのは気が引けた。
代わりにいつか旅行に行こうと話していたのだが、こんなすぐに実現するなんて。
「嬉しいけど、いいの? 呼び出しとかあるかもしれないし……」
伊織さんは当直勤務がない限り表向きは土日休みにはなっているが、呼び出しもある上に週末に外勤が入ることもある。そのおかげで結婚してから、休日の丸二日間を一緒に過ごしたことがないのだ。
「大きな病院ってことは医師の数だって多いんだ。調整さえすれば新婚旅行くらい問題ないさ。逆に緋真こそ大丈夫?」
「そっか。それなら行きたいな。私こそ融通が利く仕事だから大丈夫だよ」
「よかった。じゃあまたあとで決めようか。もし行きたいところがあれば考えいおいて」
「うん、ありがとう……」
いつの間にか、先ほどの甘やかな雰囲気はすっかりなくなっており、穏やかで優しい時間が流れている。
体には物足りなさを残しつつも、心が十分に満たされるのを感じていた。
伊織さんはもう一度私の髪へ触れ、ふわりと撫でると、僅かに目を細めた。
「……それにしても、緋真がはっきり言ってくれて嬉しいな」
「そうかな?」
「うん。今回みたいに知らないうちに誤解されたり不安にさせたりするのは嫌だから、思うことがあれば何でも言って。もちろん、俺もそうさせないようにはしたいけど、すべては難しいと思うから」