BODY BLOW ~Dr.剛の恋~
試合後、俺たちは行きつけの居酒屋にいた。
鈴子も試合後だというのについてきた。

俺と宝はビールを、鈴子はウーロン茶。
さすがに、試合でダメージを受けている玲子に酒は飲ませない。

「鈴子、大丈夫?」
傷口を気にしながらストローでウーロン茶を飲む鈴子を、宝が気遣う。
「大丈夫よ。自分が好きでやっているんだから、平気」

鈴子は宝より小柄な身長150センチほどの女性。
顔だってかわいい。
俺に言わせれば、何でボクシングをするのかがさっぱり分からない。
年齢も宝や俺と同じ35歳と決して若くはないし、最近では試合が終わるたびに引退の話が聞こえてくる。
でも、鈴子はやめない。

「ねえ、あなたたちってどの位経つの?」
唐突に鈴子が聞いてきた。

「どの位って?」
思わず聞き返す。

「一緒に暮らすようになってからよ」
枝豆をつまみながら、俺たちを見る鈴子。

「部屋をシェアして2年」
2杯目のビールを飲み干して、宝が答える。

ふふふ。
鈴子がおかしそうに笑うと、
「あなたたちのはシェアとは言わないの。同棲でしょ」
俺と宝の顔を交互に見る。

確かに、周りから見たら同棲している2人なのだろう。

でも、俺と宝には越えられない壁がある。
どんなことがあっても踏み越えられない一線。
だから、俺と宝に将来はない。
先のことは考えてはいけないんだ。
俺は、宝にとって悪い記憶の象徴だから。
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