モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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「さ、じゃあドレスの注文ね」
メルセデスは、もうすでに切り替えたらしかった。
「仕立屋を呼ぶ前に、ハルカの好みを聞いておくわ。どういう色合いやデザインが好みかしら?」
「以前の世界では、ピンクやレモンイエロー、白を好んで着ていましたけれど。でも、こちらの流行に合わせますよ。逆に、どういう色が男性に好まれるのでしょうか?」
 これだけ価値観の違う世界だ、また失敗しないように情報を集めておこうと思ったのだが、メルセデスはなぜかきょとんとした。
「流行? 男性に好まれる?」
「はい。以前の世界では、今言ったような色が男性に人気だったのですが」
 するとメルセデスは、悩ましげに額に手を当てた。
「うーん、ハルカ。どうやら物の考え方が、まるっきり違うみたいね。こちらでは、『流行の色』などというものは存在しないわ。『男性に好まれる色』もね。ファッションの原則は、『自分に似合うものを着る』。これだけよ」
「――そうなんですか!?」
 私は目をぱちくりさせた。そりゃ、似合うものを着るに越したことはないだろうけれど。流行が存在しないなんて、想像もできない。
「いかに、自分に似合うファッションを見つけて実現できるかで、評価されると言ってもいいわね」
 補足するように、メルセデスは言った。
「例えば、私は髪の色がシルバー、目の色が黒でしょう? ドレスは、それに合うものばかりよ」
 昨日私に貸してくれたグレーのドレスを、メルセデスが指す。確かに、彼女にはよく似合うだろう。それで寒色系のドレスばかりだったのか、と私は納得した。
「ハルカはピンクなどが好きと言ったわね。確かにそれも似合うでしょうけれど。大人っぽさを目指すなら、違う色の方がいいと思うわ。髪と瞳がブラウンということを考えると、例えば黒いドレスはどう?」
 私は、髪だけでなく瞳も茶色がかっているのだ。それに合わせるなんてあまり考えたこと無かったなあ、と私は思った。いかに流行を取り入れた、男性ウケする服にするか、ということしか頭に無かったのだ。
「黒はあまり着たことが無いですが、チャレンジしてみます」
 うんうん、とメルセデスは頷いた。
「赤などもいいかもしれないわね。それからハルカは小柄だから、できるだけ背が高く見えるデザインにしましょう」
 考え方が違いすぎてびっくりしたけれど、ファッションの話は楽しい。侍女のハイジも交えて、私たちはあれこれとドレス談義を繰り広げた。
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