モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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(何か、こういうのって楽しいな……)
 私は、しみじみ思った。女同士でファッションの話をするなんて、小学生以来だ。私には、ずっと女友達がいなかった。服について話す相手は、ブティックの店員くらいだったのだ。
 すると、ハイジが思い切ったように尋ねてきた。
「ハルカ様のその爪、素敵ですね。前の世界では、これが普通だったのですか?」
「あ、ジェルネイルのこと?」
 どうやらこちらでは、そういう習慣が無いらしい。メルセデスとハイジは、そろって首をひねった。
「じぇるねいる?」
「ええ。全員ではないですが、している女性は多かったですよ」
「へええ。爪のお手入れならしているけれど、色を塗るという発想はないわね。それに、飾りまで」
 メルセデスは、私のピンク色のネイルと、上に施されたラインストーンを興味深げに見つめた。
「でも、こちらでは行われていないのなら、剥がした方がいいですよね」
 剥がすための材料はそろうかなあ、と不安に思ったが、メルセデスは意外にもかぶりを振った。
「あら、そんな必要は無いわよ。似合うファッションを見つけるのが重要と言ったでしょう? その爪は、ハルカによく似合っているもの。それで舞踏会に出席したら、きっと注目の的ね」
「舞踏会!?」
 ええ、とメルセデスはけろりと頷いた。
「あなたは、王太子殿下の側妃を目指すのでしょ? ダンスくらい、余裕でこなせなければ。他にも、国のこと、文化のこと、学ぶべきことは山ほどあるわよ。グレゴールは、早速家庭教師を手配しているわ」
 一瞬びびりそうになった私だが、すぐに思い直した。メルセデスの言葉は、その通りだ。側妃になるには、ダンスや教養は必要だろう。他の女たちに、負けるわけにはいかない。
(有力ライバルがいるとも聞いたことだしね……)
「頑張りますね」
 メルセデスの目を見て頷けば、彼女は満足げに微笑んだのだった。
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