モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!

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 グレゴールは、私を主催者の公爵夫妻の元へ連れて行った。私はドレスの裾をちょこんとつまんで、習った通りに挨拶した。
「まあ、異世界から来られたなんて、何かと大変でしょう」
「話は伺っていますぞ。グレゴール殿が召喚した聖女のおかげで、クリスティアン殿下は、めざましく快方へ向かっておられるとか。さすがですな」
 夫妻は、口々にそう言った。歓迎されているようで、ほっとする。グレゴールは、チラと私を見やると、真剣な眼差しで夫妻に訴えた。
「このハルカ嬢は、慣れない異世界で頑張っているのです。本当に気立ても良く、真面目な令嬢でしてね。ついては、輿入れ先を探してやりたいと考えているわけです。本日は良い機会かと、連れて参りました。不慣れなところもあるかと思いますが、大目に見てやっていただけると幸いです」
(輿入れ先……? ああ、嫁入り先ってことね)
 側妃狙いは内緒だから、そういう設定にしているのだろう。調子を合わせなければと考えていると、背後で男性の声がした。
「そういうことなら、いくらでも協力するぞ? グレゴール」
 振り向くと、そこには一組の若い男女が立っていた。どちらも燃えるような赤毛で、瞳はそろってラベンダー色だ。顔立ちも似ているし、兄妹か何かだろうか。そして、装いから察するに、身分が高そうである。
「可愛らしいご令嬢ではないか。何なら、今宵このまま、僕の元へ輿入れするかい?」
 男性の方が、私にウィンクする。イケメンといえばイケメンなのだが、何だか軽薄そうだ。すると女性の方が、ため息をついた。こちらは、目鼻立ちのくっきりした美人だ。グラマラスでもある。
「お兄様、異世界からいらした彼女に、冗談を仰るものじゃありませんわ。どうせ、何十人目かの恋人になさって終わりでしょう?」
(はあっ? 何よ、それ)
 どれだけチャラ男なのだろうか。私が呆れ果てる横で、グレゴールは、彼らに恭しく挨拶した。
「これは、ご挨拶が遅れまして。エマヌエル様、カロリーネ様、ご機嫌麗しゅう存じます。時にベネディクト殿下は、お健やかにお過ごしでいらっしゃいますか?」
(ベネディクト殿下ですって!?)
 私は、ハッと思い出した。現王弟ではないか。グレゴールが批判していた……。
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