モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
第十一章 愛する人を、救いたい

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 王都から手紙が届いたのは、その矢先のことだった。ハイネマン家の紋章が入った封筒を携えた従僕は、深刻な表情で、私の部屋を訪れた。

「ハルカ様。メルセデス様より、お手紙です」

 ついに来たか、と私は身構えた。しばらく一人にしてくれと頼んで、早速開封する。

 便せんには、見慣れたメルセデスの美しい筆跡が並んでいた。だがその冒頭を目にしたとたん、私は陰鬱な気分になるのを感じた。

『親愛なるハルカへ。まずは、残念な報告をしなければなりません。この度の戦争ですが、ロスキラ軍が勝利する見込みです。アウグスト五世陛下は、イルディリアが優勢と仰っていますが、あれは国民に対する手前です。実際、ロスキラ・ベネディクト殿下の連合軍は、ほぼ王都を制圧する勢いです』

 私は、顔を覆った。やはり軍を指揮していた人物だけあって、ベネディクトは強かったのだろう。

(彼が、新国王になるのかしら……)

 戦まみれの日々が、始まるのだろうか。クリスティアンに王位を継いで欲しかったなあ、と私はうなだれた。ロスキラとの関係改善に、意欲を燃やしていた彼。サンドイッチを食べた時は、米も輸入しようと言っていた。ハイネマン領の領民たちも、興味を持ってくれていたのに……。 

 手紙は、まだ続いている。勇気を振り絞って読み進めた私だったが、その次の文章に、凍り付いた。

『ハルカ、ショックを受けないで聞いてちょうだい。グレゴールをはじめとする、アウグスト五世陛下の側近たちは、すでに全員投獄されました。極刑となる可能性が高いです』

 自分の目が、信じられなかった。便せんに記された『極刑』の文字がぐるぐる回る。呼吸をしているのが不思議なくらいだった。今にも、卒倒してしまいそうだ。

(何? グレゴール様が殺されるということ……?)

 国王及び王太子の信頼厚き宰相ともなれば、当然の処分なのかもしれない。それでも、認めたくなかった。

(嘘よ。絶対に、嫌。助かる手立ては……)
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