モテ基準真逆の異世界に来ました~あざと可愛さは通用しないらしいので、イケメン宰相様と恋のレッスンに励みます!
3
私が辻馬車で王都へ到着したのは、四日後だった。急いでいるからと、飛ばしてもらったのだ。
「うわあ、こりゃひどいなあ」
近付いて来た町並みを見て、御者はうなり声を上げた。かつての華やかな光景は、完全に姿を消していた。関門は放火でもされたのか、焼けただれ、多くの建物は崩壊していた。多くの死者が発生したのだろう、馬車の中にまで血の臭いが漂って来る気がする。
「お嬢さん、本当に入る気?」
「ええ、ごめんなさい。ハイネマン公爵の屋敷までお願いしたいの。チップは、弾むわ」
及び腰の御者を拝み倒して、先へ進んでもらう。自分を奮い立たせるためか、彼はこんなことを言った。
「でも、もうすぐ終わりそうじゃないですか? きっと、イルディリアが勝ちますぜ」
メルセデスの手紙にもあった通り、国民はアウグスト五世の言葉を信じているのだろう。本当のことは言えないので、私は曖昧に微笑んだ。
ようやく、ハイネマン邸へ到着する。私は、彼に多めのチップを渡すと、大急ぎで馬車を降りた。だが、懐かしい屋敷周辺を見回して、私はおやと思った。門番がいないのだ。
(休憩中……?)
だがそれだけではなく、屋敷全体が、しんと人気が無い。おかしいな、と私は思った。
(でも、手紙には、ここへ来いとあったし……)
そこで私は、ふと気付いた。王都までの長い道中、私はメルセデスからの手紙を何度も読み返した。その際、私は軽い違和感を覚えたのだ。それが何かは、なかなかわからなかったのだが。
(メルセデス様、カロリーネ様を様付けしていた……?)
普段のメルセデスは、カロリーネを呼び捨てにする。手紙だから、敬意を払ったのだろうか。
本当に、この門をくぐっていいものだろうか。私は、一瞬躊躇した。だが、その時。
ガンと、後頭部に鈍い衝撃が走った。そのまま私の意識は、遠のいていった。
気が付くと、背中が冷たかった。頭も痛い。うっすら瞳を開けてみたが、視界は薄暗かった。
「お目覚め?」
聞き覚えのある声に、私はハッとした。体を起こそうとして、ここがどうやら地下室であることに気付く。私は床に転がされて、足首には鎖が巻き付いていた。……そして目の前には、カロリーネが立っていた。
「ここは……」
「我が屋敷の地下牢よ」
カロリーネが短く答える。事情が飲み込めずにぼんやりしていると、彼女はケラケラ笑った。
「まだわからないの? 騙されたってこと。あの手紙、メルセデスからじゃないわよ。書いたのは、私」
「なっ……、まさか」
私は、呆然とした。
「確かに、メルセデス様の筆跡で……。それに、封筒にはハイネマン家の紋章も入っていました」
「うわあ、こりゃひどいなあ」
近付いて来た町並みを見て、御者はうなり声を上げた。かつての華やかな光景は、完全に姿を消していた。関門は放火でもされたのか、焼けただれ、多くの建物は崩壊していた。多くの死者が発生したのだろう、馬車の中にまで血の臭いが漂って来る気がする。
「お嬢さん、本当に入る気?」
「ええ、ごめんなさい。ハイネマン公爵の屋敷までお願いしたいの。チップは、弾むわ」
及び腰の御者を拝み倒して、先へ進んでもらう。自分を奮い立たせるためか、彼はこんなことを言った。
「でも、もうすぐ終わりそうじゃないですか? きっと、イルディリアが勝ちますぜ」
メルセデスの手紙にもあった通り、国民はアウグスト五世の言葉を信じているのだろう。本当のことは言えないので、私は曖昧に微笑んだ。
ようやく、ハイネマン邸へ到着する。私は、彼に多めのチップを渡すと、大急ぎで馬車を降りた。だが、懐かしい屋敷周辺を見回して、私はおやと思った。門番がいないのだ。
(休憩中……?)
だがそれだけではなく、屋敷全体が、しんと人気が無い。おかしいな、と私は思った。
(でも、手紙には、ここへ来いとあったし……)
そこで私は、ふと気付いた。王都までの長い道中、私はメルセデスからの手紙を何度も読み返した。その際、私は軽い違和感を覚えたのだ。それが何かは、なかなかわからなかったのだが。
(メルセデス様、カロリーネ様を様付けしていた……?)
普段のメルセデスは、カロリーネを呼び捨てにする。手紙だから、敬意を払ったのだろうか。
本当に、この門をくぐっていいものだろうか。私は、一瞬躊躇した。だが、その時。
ガンと、後頭部に鈍い衝撃が走った。そのまま私の意識は、遠のいていった。
気が付くと、背中が冷たかった。頭も痛い。うっすら瞳を開けてみたが、視界は薄暗かった。
「お目覚め?」
聞き覚えのある声に、私はハッとした。体を起こそうとして、ここがどうやら地下室であることに気付く。私は床に転がされて、足首には鎖が巻き付いていた。……そして目の前には、カロリーネが立っていた。
「ここは……」
「我が屋敷の地下牢よ」
カロリーネが短く答える。事情が飲み込めずにぼんやりしていると、彼女はケラケラ笑った。
「まだわからないの? 騙されたってこと。あの手紙、メルセデスからじゃないわよ。書いたのは、私」
「なっ……、まさか」
私は、呆然とした。
「確かに、メルセデス様の筆跡で……。それに、封筒にはハイネマン家の紋章も入っていました」