浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~

信じられないんですけど……

「クミ、ありがとう」

 たった一言の謝辞なのに、それだけで充分と思えるほど心のこもったお礼だった。

「きみは、恋愛が好きじゃないだろう?あ、失礼。現実ではなく、作中で描いたり読んだりすることだけど。「黒バラの葬送」を読んで、なんとなくわかったよ。流れ的に黒バラ、つまりエルバが男性といい雰囲気になるシーンはときどきあるよね。だけど、それはあくまでも読者がよろこぶからだ。きみ的には、恋愛のシーンなんてなくてもいいと思っている」
「ええ、その通りよ。出来れば描きたくない。だけど、小説の基本ですものね。ほんとうは、もっと過激なシーンも描かなければならないのでしょうけど、そこまではいまのわたしではムリだから。がんばってがんばって、キュンキュンくるとかじれったいとか、そういう展開の後に口づけして、その後はいきなり寝台で朝を迎える。そんなふうに急に時間の経過をはやくしてごまかす、みたいな感じかしら。だけど、いつかはじっくり駆け引きし、熱烈濃厚シーンをたっぷりって思っているの」

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