浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~

クミ、大ピーンチ!

「すっとこどっこい?」

 ベレー帽の男は当惑している。

「遠い遠い東の大陸の国の言葉よ。とにかく、笑われるのは不愉快だわ。というわけで(・・・・・・)、この辺で失礼させてもらうわ。さようなら」

 きちんと別れの挨拶をするなんて、さすがはわたしね。

 踵を返すと、彼らがいるのとは反対の方向へとゆっくり歩きだす。

「おうっ、またな」
「バカ野郎っ、のせられんな」

 狩猟用の帽子の一人が言うと、ベレー帽の男が叱り飛ばした。

 そうよね。これで見逃してくれるわけないわよね。

「このクソ女がっ!二、三発ぶん殴ってやる」

 さっきわたしを見逃してくれようとしたバカの怒鳴り声が、背中に当たった。
 
 そのときには、馬蹄の響きがすぐうしろに迫っている。

 振り向くと、その男が馬上から腕を伸ばしてわたしのどこかをつかもうとしている。彼の顔がすぐまうしろにある。

< 153 / 330 >

この作品をシェア

pagetop