浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
「クーン」

 そのとき、アレックスの足許に何かが転がっていることに気がついた。

「ああ、すまない」

 彼は屈むとその丸っこいものを両手ですくった。

「キューッ」
「な、なにこれ?」

 彼の両掌上に小さなモフモフがのっている。

「やだ。なんてことなの。可愛すぎる」

 わたしは、控えめに言ってもモフモフに弱い。毛の生えた動物は、何でも大好きである。

 だから、わが家の家畜たちはぜったいに食べたりしない。どれだけ困窮しようと、毛の一本も抜いたりするものですか。

 訂正。毛は抜きたい。毛を抜くのは大好き。
 毛の生えかわる時期になると、ムダにブラッシングしてしまう。やわらかい毛がゴソッと抜ける感覚は、得も言われぬものがある。しあわせを堪能出来るひとときである。

< 49 / 330 >

この作品をシェア

pagetop