浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~

かぶりまくり

「アレックス、図書館で本を譲ってくれてありがとう」

 ふと思い出し、アレックスにお礼を言った。

 図書館で会った際、書架にある同じレシピ本を取ろうとして彼が譲ってくれたのである。

「いや、いいんだ。違うレシピ本を借りて帰ったよ」
「もしかして、あなたがお料理を?」
「ああ。執筆の息抜きにね。あるあるだろう?」
「そうね。とてもよくわかる。ムダに掃除をしたくなったり、片付けをしたくなったり、散歩をしたくなったり」
「わかるわかる。ぼくもそうさ。原稿用紙を前にペンを取ると、きまってあれやこれやと気になり始める。これをやっておかねばとか、あれをやり忘れていたとか」
「場所をかえてみたくなったりもするわ」
「それもあるな。いっそ旅にでたくなる」

 アレックスと視線を合わせたまま、苦笑してしまった。

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