浮気性の公爵に「外見も内面も最悪」と離縁されましたが、隣国の王太子は見染めてくれたようです~自由気まま少々スリリングな生活を満喫中です~
 彼にやわらかい笑みとともに提案され、なぜか心臓が飛び跳ねてしまった。

 ちょっと待って。これってやっぱり小説のまんまじゃない。

 こうして、男性は女性にまた会うきっかけを作るのよ。当然、女性はドキドキしながらそれにのっかるわけで……。

 なるほど。アレックスは、期待に応えて小説のまんまのストーリーをリアルに描こうとしているのね。

 それなのに、わたしってば心臓が飛び跳ねてしまった、ですって?

 独りよがりもいいところだわ。

 わたしのジャンルなら、彼は暗殺の対象よ。だから、また会う必要がある。何度か会い、おたがいをよく知り、親密になる。そうして、最終的にはクライアントの依頼を果たすの。つまり、暗殺するわけ。

 そこに愛はない。あくまでも仕事とプライドの為よ。

 いかなる情も持ち合わせやしない。

 それが、わたしの世界。違った。わたしの小説のジャンル。

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