キスだけでは終われない
 
「まぁ、お前さんの香苗に対する想いはわかった。ずいぶんと恥ずかしげもなく言えるもんだな。だが、認めた訳じゃない。ここまで来て、これだけのことをしたんだから、香苗が選んだなら考えるよ」

部屋にノックの音がして、会長の秘書らしき男性が入ってくると「時間だ。次の予定があるのでな」と言われ、席を立った。

「はい。今日はお時間いただき、ありがとうございました」

結局、彼女の連絡先を聞くことはできなかった。

無理を言って作ってもらった短い時間で、俺の本気を伝えられただけで、とりあえずは良しとしないとな。

カナに会いたい気持ちが溢れてくる。
どうしたら、会えるのだろう…。 

彼女は俺がお祖父さんに会いに行ったことを聞くのだろうか?

会長から俺のことを聞いたら、どう思うだろうか。また困らせてしまうかな…。

でも、君を困らせるのは俺を気にして欲しいからなんだ。

そんな子供じみた感情が自分にあったことにも驚きだが、こんなことは彼女以外には絶対にしないことだ。

俺の腕の中で笑う君をもう一度抱きしめたいんだ…。
どうかもう逃げないでほしい…。

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