キスだけでは終われない
「あのさ…ちょっと昔話をしていいか?」
「あぁ…」
「まだ会社を継ぐか悩んでいた頃に、うちの商品を雑誌で使ってくれることになって撮影を見学に行ったことがあったんだ。その時モデルの女の子が『自分で稼いだお金でうちの靴をオーダーするのが夢なんだ』って目をキラキラさせながら話していて、それで僕はこの子の夢が叶うように会社を存続させていこうって思ったことがあったんだ」
「それがカナだったのか?」
「似てるって思ったんだ。でも、違った。モデルだった女の子は香苗さんの従姉の中田さんだった。さっき空港まで話をしに来てくれて、本人に会って確信したよ」
「彩未さん…だったのか?」
「お前が名前で呼ぶとか、ちょっと気にくわないけど、そうだよ。本人にもちゃんと確認したからね。それで…香苗さんのことも聞いた」
「それで?」
「うーん…香苗さんのことはすごく可愛いと思ってる。でも、僕が本気になれるのは彼女ではないって気づいたよ」
「じゃあ…」
「あぁ…。それで明日、香苗さんと会う約束になっているんだけど…」
修一がライバルでなくて、ホッとした瞬間だった。