キスだけでは終われない
そこで会長である祖父から言われた思いもよらなかったこと。

「香苗。お前もそろそろ昔のことを克服し、結婚を考えてくれないだろうか。わしも年だし生きているうちにお前の子供の顔が見たい。そこで確認なんだが、今お付き合いしている人はいるのか」

私は家族以外の男性が苦手である、というより怖い……。

いつも優しい父と可愛い弟はもちろん、頑固だけど私を気に掛けてくれる祖父は大好きだ。
仕事を始めて配属されたのは営業部、男性社員の割合が高く、職場で知り合った人の中には良い人もいて会話するくらいなら困ることは減ってきた。でも、個人的な付き合いなどしている人はいない。

当然、祖父はそんな事知らないはずはない。
なのに、こんなことを聞いてくる。
嫌な予感しかない……。

少し不貞腐れながら返事をする。
「そんな人いる訳ないでしょ」

「やはりいないか…それなら…」
と、祖父の顔が微妙にニヤニヤしている。
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