キスだけでは終われない

お風呂を終え、眠りにつこうとしていた時にスマホにメッセージがあったことに気づく。送り主は片山さんだった。

『今日はありがとう。また今度改めて食事にでも行きましょう。ゆっくり休んで。おやすみなさい』
と書かれていた。

『今日はありがとうございました。おやすみなさい』

返信すと、すぐに猫が布団をかぶっている可愛い『おやすみzzz』と 書かれたスタンプが送られてきた。

まだ起きていたんだ。
ここで私もスタンプを返すべきだったんだろうかと考えながら、スマホを眺めていた。

経験値の低さだな…と、割りきることにしてそのまま返信はせずにスマホを握りながらベッドに横になる。

まだ時々思い出してしまうことがある。それはシンガポールで出会った彼…マサキのこと。連絡先も知らない、名前以外も知らない、それでも忘れられない人を想いながら私は眠りに着いた。

いつまでも引きずってはいられない、と頭を振り記憶も振り落とせれば…と思う。

「忘れたいのに…な」
< 74 / 129 >

この作品をシェア

pagetop