キスだけでは終われない

話をしながら二人並んで歩いていると、すれ違う女性が振り返っていく。片山さんも背が高くてイケメンだもんね。本当にデジャブって感じ。

しばらくすると片山さんに「ここだよ」と言われた。ウエルカムと書かれたブラックボードの横にあるドアを開けると、彼の大学時代のお友達だという人に迎えられる。

「いらっしゃいませ」

そう言って迎えてくれた人は日焼けした肌と長めの髪がワイルドさを感じさせるような、それでいて爽やかな笑顔の人だった。しかも片山さんに負けないくらいのイケメンさん。

「昨日は急に連絡して悪かったな。最近はずいぶんと流行っているみたいで予約もいっぱいだったんじゃないか?無理させたな」

手を挙げ肩を叩きながら笑顔で話している片山さんと、首に手をかけてくる二人の仲よさそうな様子を眺めていた。すると二人の視線が私に向く。

「初めまして。私はこちらのお店でオーナー兼シェフをしています。佐伯浩介と申します。オーナーなんて言っても、ただの料理好きが料理作って店やってる感じかな〜。片山とは大学で一緒でこの年になってもなんとなく友人してます」

「なんとなくってなんだよ。お前がフラフラしていた時も見放さずにいたんだぞ」

「こんばんは。初めまして、高梨香苗です。よろしくお願いします」
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